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take a breather

第22章 Song for me

「でも歌声は普通じゃない…」

「え?」

思わず呟いてしまった

「あっ、いえっ…大野さんの歌声は普通の人とは違うかな、って」

「ん〜、それもよくわかんねぇんだよなぁ…
家の両親が音楽好きで
俺もその影響で子供の頃から歌う事が多かったんだけど
俺が歌うと周りの人たちが喜んでくれて
喜んでくれる姿を見るのが嬉しくて歌ってた

んで、気が付いたらこんな事になってたんだよなぁ」

みんなの心を震わす歌声を持っているのに
この人はそれを自慢するでもなく
それを疑問視さえする

類稀な才能を持ちながら
気取らず、自分の力を過信しない…

そのギャップに、人としての魅力を感じてしまう

益々、智にハマってしまいそうだ

「あっ、そこ左に曲がって」

「え?あっ、はい」

突然の智の指示

「お〜、セ〜フ…間に合ったぁ」

子供みたいな笑顔を見せる

「次はどっちに進みます?」

住宅街の細い道に入ってきた

「このまま、真っ直ぐ
ちょっと先に安くて旨い定食屋があるんだ
そこで飯食おう?」

「はい」

安くて旨い…か

確かに、俺と同年代の普通の青年だ

「楽しみです」

貴方の側で働ける事…

「ふふっ…楽しみにしててよ
間違いないからさ」

「そうですね…俺も間違いないと思います」

この先、貴方が大物歌手になることは…

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