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take a breather

第22章 Song for me

レコーディングスタジオに入り、国分さんがスタッフの方に俺を紹介してくれた

「坂本さん、新人の櫻井です
よろしくお願いします」

国分さんに続いて挨拶をする

「よろしくお願いします、櫻井です」

坂本さんと呼ばれたその人は
俺の事を、頭のテッペンから足の先まで一通り見た

「いや〜、さすが松岡さん…
また、いい子見つけて来たんじゃない?
少しハスキーな声が良いねぇ…
で?デビューはいつ?」

は?デビュー?

「いいえ、坂本さん。櫻井は歌手じゃなくて、我が社の新入社員です」

「えっ⁈そうなの?なんだテッキリ歌い手さんかと思ったよ
華もあるし、声も特徴的だから売れると思ったのになぁ…勿体ない」

また言われた…『勿体ない』
何が勿体ないのかわからん

「まぁ、ウチの松岡が選んだ事には変わりないので、有能な人材だとは思います
可愛がってやってください」

「オッケー。よろしくね、櫻井くん」

坂本さんに手を差し出され
その手を握り、改めて挨拶をした

「よろしくお願いします」

握手を交わした手を離すと、坂本さんは国分さんに声を掛ける

「智来てるんだろ?
もう準備出来るから、連れて来て貰える?」

「もういけるんですか?」

「早く始めないと、智が行方不明になっちまう」

坂本さんがおかしそうに笑った

「坂本さん、ご存知だったんですか?昨日の事」

「ウチのスタッフが『国分さんが蒼ざめて智を探してます』って報告に来たよ
時間内に来たから、無事見つかったんだな、ってね」

「はぁ…お恥ずかしい所を見られまして…」

「こちらとしては、時間通りに来て貰えれば何の問題もない
智の歌の出来も良かったし
歌うのが嫌で逃げ出した訳じゃないんだろ?」

「はい。それはないです」

「なら、始めようか」

「すぐに呼んできます。櫻井くん、行こう」

「はい」

坂本さんに会釈をして、部屋を出た

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