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take a breather

第22章 Song for me

「大丈夫?櫻井くん」

「えっ…」

目の前に国分さんの顔が現れ、意識を現実へと呼び戻された

レコーディングをする智を見ていて、意識がどこかに飛んでた…

「あ…大丈夫です。大野さんの歌う姿を初めて見たので感激しちゃって」

「智の歌聴くの初めて?一度会ってるんだよね?」

国分さんは覚えてなかったか…

「国分さんも一緒にお会いしてますよ?」

「えっ?俺も?」

「はい。一昨年の夏フェスで、大野さんが林の中で寝てるのを起こしたのが俺です」

「あー!あの時の!あれ、櫻井くんだったんだ
ごめん、気が付かなくて…
あの時は智の出番が近かったから慌ててて、ろくに挨拶もしなかったよね」

「俺、あのフェスで、会場整理のバイトしてたんです
だから、大野さんの生歌を聴いたのは聴いたんですけど
背中を向けていたので、歌ってる姿は見られなかったんです」

「そうだったんだぁ
じゃあ、驚いたろ?普段の智と歌ってる時の智は別人の様なオーラを出すから」

「えぇ。今が正にその状態で、呆気に取られてました
こんなにも人って変われるんだと思って吃驚です」

「突然スイッチが入る人は、この業界には結構いるよ
歌手よりも俳優さんによく見られる傾向だけど
まぁ、表現者って意味では、歌手も俳優も一緒なのかな…
どちらにしても、凄い才能には間違い無いよね」

凄い才能…そうだよな…
じゃなきゃ、あんな歌を歌える筈がない

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