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take a breather

第22章 Song for me

それから、俺と智の誰にもバレてはいけないお付き合いが始まった

かと言って、何か大きな変化があったかと言えばそれは無く
智と過ごす時間は、送迎と夕食を一緒に食べるくらいの物…

誰が見ても俺と智が交際しているとは考えないだろう

あの告白の日も
俺が返事をした後、智は俺を引き起こし
軽く抱きしめて『ありがと』って言っただけで終わった

だから正直言うと、俺自身も智と付き合ってる実感はない

恋人と言うよりは友達みたいな…


「智、調子いいんじゃない?」

「そうですね。最近、やる気オーラが出てますね」

レコーディングした智の歌を聴きながら、坂本さんと国分さんが話をしてる

「やる気がなかった訳じゃないけど
何か物足りなさを感じてた…
それが満たされたのかな?」

「どうでしょう…でもここの所、逃走癖はなくなりましたね
それに『やる事がない』っていうのも言わなくなったかな?」

「恋でもしてるんじゃないのぉ?」

ニヤニヤ顔の坂本さん

「いやぁ…それはないでしょう…
今はレコーディングばかりで、外に出てないですし
そんな相手に出会う場所がないと思いますよ?」

「そっかぁ…あの艶というか、色気は
恋をした男の物だと思ったんだけどなぁ…」

ふたりの話を聞いていて、心臓がバクバク鳴った

まさか歌を聴いただけで、智の変化に気付くとは…さすがプロの仕事人

俺も、智の歌う姿はカッコいいと思うよ?
でも、それは惚れた欲目だと思ってた…

第三者から見てもわかるくらいに、智の中で変化は起きてるって事なのか…

友達と変わらないって思ってるのは、俺だけで
智はちゃんと俺の事を恋人として見てくれているのかな?

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