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take a breather

第22章 Song for me

「櫻井くんは、最初から智に近付く目的でこの会社に入ったの?」

智本人に近付けるとは思ってなかったけど、全く違うとも言えない…

「自分の存在が智の芸能活動の邪魔になると思わなかった?」

「それは…」

思ってた…だから誰にもバレちゃいけない関係なんだって…

「智が自分の物になるなら、歌手としての智はどうでも良かった?」

「いいえ!それは絶対ないです!
俺は智くんの歌が本当に好きでっ、彼の歌をもっと多くの人に聴いて貰いたいっ!」

「はぁ…『智くん』ねぇ…」

国分さんが大きな溜息を吐く

「あ…」

しまった…外では『大野さん』って呼んでたのに…

「櫻井くんの気持ちはわかったよ…
でもふたりの仲を認める訳にはいかない
それは、わかるよね?」

「…はい」

「君が女の子なら問題なかったんだけどな」

国分さんが苦笑いをする

「…は、い……すみません…」

「とにかく、今日から智の送り迎えは辞めてもらう
智の見張りもだ
ふたりの事は社長には話してない
櫻井くんも就職してすぐに解雇は辛いだろ?
智の為なら、あの人ならあり得るから
だから、暫くは自宅待機していて」

「…はい…わかりました」

「レコーディングが全部終わったら
適当な理由付けて、別の部署に配属して貰えるよう社長に話すから」

国分さんが立ち上がり、俺もそれに続いて立ち上がる

「智がレコーディングに行ったら呼びに来るから
それまでこの部屋に居て」

ほんの僅かな時間さえ、智に会う事は許されないのか…

「あの…大野さんには何て…」

「智にはふたりの仲を知った事は言わない
それが原因で櫻井くんが仕事を外されたってなったら、あいつ責任感じるだろうから
櫻井くんには別の仕事が出来たって事にするよ
わかってると思うけど、プライベートでも智と会わないように」

「…はい」

バレたらふたりの仲は終わるってわかってたのに
言葉にされると胸が苦しい…

別れが早過ぎる…

今更悔いてもどうにもならない事だけど
なんでもっと慎重に行動しなかったんだろう

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