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take a breather

第22章 Song for me

「俺も気になって今朝、智の様子を見に行ってきた
声が出てないとか、体調が悪いとかではないんだ
坂本さんの言う通り、悪くはない」

「よかった…」

体調が悪い訳じゃないんだ…
ひとまずホッと胸を撫で下ろす

「なんで坂本さんが悩むのか正直わからなくてな
そしたら坂本さんが一週間前に録った歌を聴かせてくれたんだ
それで坂本さんが悩んでる理由がわかった…
声の艶が違うんだよ」

「艶、ですか?」

「まぁ早い話、気持ちの問題だな」

「大野さんのやる気がないって事でしょうか…」

「それともちょっと違うかな
本人は手を抜いてるつもりじゃないだろうから
アイツは自分の心が素直に歌に出る
だから、世間では『泣ける歌』なんて言わてるんだ」

「では、その歌に心が入ってないって事ですか?」

「まぁそれに近いかな…
今回のアルバムには恋愛ソングも入ってるって知ってるか?」

「はい。レコーディングで何曲か聴きました」

「今まで智の歌は、若者の心理を歌った物が多かった
でも、今回智の書いた歌詞の中に恋に対する詩があったから、数曲入れたんだ
智にしたら新境地だな」

言われてみれば、確かに今までなかった…恋愛ソング

「その初めての恋愛ソングも歌いこなしていたのに
突然、調子が下がった…と言うか、物足りなく感じたんだと、坂本さんには…
で、櫻井に話を聞こうと思ったら、お前の姿がスタジオになくてな
代わりに国分に話を聞いた」

社長がこちらをチラッと見、俺はドキッとした

やはり知られた?俺たちの関係

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