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take a breather

第22章 Song for me

「もう泣くなよ…」

智の困ったような声…

「ごめ…」

智の腕に包まれて、必死に涙を止めようとしてるんだけど
涙が勝手に溢れてくる

会えなかった日々の苦しさが
智の歌った歌詞と重なって涙が止まらない…
智も同じ想いでいたの?



智の歌を聴いて、涙が溢れてしまい
曲が終わった所で、智のレコーディングの邪魔をしないようにと、部屋を出た

その後を追うようにして出てきた智…

「さ……大野さん…なんで…」

「俺の気持ちが上の空になっちゃうから、一度休憩入れるって」

苦笑いする智…

智に手を引かれ、智の控え室に連れて来られた

ソファーに並んで座ると、すぐに智は俺を優しく包み込んでくれ
その温もりに、益々涙が止まらなくなる

「新しい仕事、今日は行かなくて大丈夫なの?」

「ん…だ、じょぶ…」

泣き止まない状態で答えると、智の腕にギュッと力がこもる

「もう泣くなよ…」

「ごめ…」

泣き止みたいのは山々なんだけど、涙が止まらない

智のレコーディングの邪魔はしたくない

早く智をレコーディングルームに戻さないといけないってわかってるのに
久しぶりに触れた智は温かくて…

この人と離れたくない

でも、この人の素晴らしい歌をもっと多くの人に聴いてもらうには、俺の存在は邪魔なんだ…

今回バレたのは、国分さんだったからいい

これが、一般の人…それこそファンになんてバレたら、智の歌手生命に関わってくる

今、こうしているのも、誰かスタッフさんに見られたら…

そう考え、慌てて智から体を離した

「翔?」

智が不思議そうに俺を見る

「ごめん、仕事場なのに…
プライベートは持ち込んじゃ駄目だ」

「ふたりきりなんだから、いいだろ?」

智の手が俺の腕を掴み、引き寄せられる

「大野さんっ」

「大丈夫…」

智の優しい声…

もしかすると、智と触れ合えるのはこれが最後かも…

なら、もう少しだけこのまま…

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