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take a breather

第1章 Now or Never

「それ、俺?」

いつの間に戻ってきたのだろう、テーブルにトレーを置いた翔くんが俺の手元を覗き込んでた。

「あっ!うん。なんかさ、初めて見た時から綺麗な顔立ちしてるな、って思ってて。
芸術家魂っていうのかな、ついつい描きたくなっちゃった。ごめんね」

キモがられる?断りもなく絵を描かれるなんて。

「俺、綺麗なんかじゃないよ…」

顔を紅く染めて俯く翔くんは、嫌がってるというよりも恥ずかしがってる感じ。

「ううん、綺麗だよ。
もっとちゃんと描きたいからさ、翔くんが嫌じゃなければ、モデルやってくれないかな?」

「モデル?」

顔を上げた翔くんと目が合うと、その目を見つめたまま大きく頷いた。

「翔くんのこと見てたら創作意欲が湧いてきちゃって。
ちょっとだけでいいからお願いします!」

頭を下げてお願いした。

チラッと翔くんの様子を見ると、少し視線を下に向け考え込むような表現。
『うん』と小さく頷くと、視線を俺に戻した。

「いいよ、わかった。
モデルなんて恥ずかしいけど、智くんの役に立てるならやるよ」

「ありがとう!」

「とりあえずおしるこ食べよ?温めて来たのにまた冷めちゃう」

優しく微笑む彼が女神に見える。

「智くん?」

あ、ヤバ…見とれてしまった。

「あ…うん。そうだね。いただきますっ」

「ふふっ、いただきます」

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