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take a breather

第23章 証

しばらくするとインターフォンが鳴った

「誰だろ?」

インターフォンの画面を確認しに行くと、そこに映っているのは智さん

なんでわざわざ?

「智さん?どうしたんですか?」

『ごめん、手が塞がってるんだ
玄関のドア開けてくれる?』

「あ、はいっ。すぐに行きます」

やっぱり一緒に行けば良かった…
両手が塞がるほどの買い物をひとりでさせてしまうなんて

急いで玄関に向かいドアを開ける

「えっ…?」

ドアを開けると、目の前には真っ赤な薔薇の花…

驚きで動きが固まる

薔薇の花束の後ろから、智さんが顔を出した

「翔、受け取って?」

「えっ…あ…」

差し出された花束を慌てて受け取った

手渡された真紅の薔薇の花束と智さんを交互に見る

「あの…これは…?」

「ん?お祝い」

「お祝い?なんの?」

「とりあえず部屋に入れて?
他にも荷物あるから」

智さんの手を見ると、他にも沢山の荷物を持っていた

「あっ、ごめんなさい」

「大丈夫。荷物はいいから、玄関の鍵締めてきて」

荷物に手を伸ばそうとして止められた

荷物を持ったまま歩いて行ってしまった智さんの後を、鍵を締めて急いで追った

キッチンで袋から買った物を出し、冷蔵庫にしまっている智さん

「あの、智さん…これは何のお祝いですか?」

品物をしまい終わった智さんが、笑顔で振り返る

「明日、何の日か覚えてる?」

「明日?…明日って……あっ!ブルーを拾った日!」

勿論ブルーと出会った日を忘れてはいない
でも、お祝いしようとは考えてなかった

ごめん、ブルー…俺って薄情なんだな…
智さんはお祝いしようとしてくれてたのに

「それなら、この薔薇はブルーのお祝い用ですね」

「違うよ、それは翔に…」

「なんでです?ブルーを拾った記念日でしょ?」

「そうだけど、それと同時にお前がここに住み始めた日だろ?」

「え?」

そう言われればそうか
ここに住み始めて、もう1年経つんだ…

「だから、それは翔にプレゼント」

そんな事まで智さんがお祝いしてくれるなんて思わなかった…

「ありがとうございます」

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