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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「他の絵もあるんだけど、観てみる?」

大野先生からのお誘い
そんなに絵画鑑賞の趣味がある訳じゃないけど
あの絵の作者の物なら観てみたい

「はいっ、是非」

「おいで?」

美術室のドアを開け、中に招いてくれる
大野先生は、更に中に進んで行く

「こっちだよ」

奥のドアに手を掛け、こちらを見た
ドアの上には『準備室』の文字

先生に呼ばれるままについて行く

部屋の壁にはいくつかの絵が飾られていた
その絵の中のひとつに心惹かれた…

「……これも先生が?」

廊下に飾ってある絵とは、スタイルが全く違う

あちらの絵はペンのみで描かれ、色はなかった…

今、目の前に飾られているのは、何色もの色のみで描かれている

「うん、ここに飾ってあるのは全部そう…
教室なんだから、本当はこんなに私的に使っちゃいけないんだろうけどね」

「あの…この絵、何を描いたんですか?」

「それは炎をイメージしたんだ」

「炎…」

確かに炎に見える…
でも俺が描いたら、絶対に使用しない色まで使われていた

「すごい…」

「ありがと。櫻井くんは絵を観るのが好きなの?」

「いいえ…こんなに絵に惹かれたのは初めてです
俺、あの廊下に飾ってある絵を観て、この高校に入ろうって決めました」

「え〜?ほんと〜?」

冗談に取られたのだろうか
大野先生はクスクスと笑ってる

「本当です!俺、嘘つきませんから!」

「んふっ、そっか。ありがとね
ならさ、ここ、いつでも来てもいいよ?」

「え…?」

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