テキストサイズ

take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

次の日から毎日、放課後は美術準備室に寄るのが俺の日課となった

「こんにちは〜」

「いらっしゃい」

準備室を覗くと、大野先生がキャンバスの前に立っていた

「あれ?絵、描いてるんですか?」

「うん。描きたくなった時に描いてるんだよ?
ここにある絵たちもそう…
日々の生活の中で、何かイマジネーションが与えられると描くんだ」

絵を描くほどのイマジネーションなんて、感じた事あるかな?
大野先生は、日常でどんな想像力を掻き立てられるんだろう

「観ても良いですか?」

「まだ途中だけど、それでいいなら良いよ?」

「はい、良いです」

「じゃあ、どうぞ?」

大野先生の隣に立つと、そこにはまだ何を描いているのかわからない絵?

ブルーとピンクの2色で染められたキャンバス

「これは?何の絵ですか?」

「ん〜?秘密。まぁ、強いて言うなら、俺の心の中?かな」

ブルーとピンク…随分と爽やかだな

大野先生の心の中は、今、爽やかな気分って事?

「この絵、いつ出来上がるんです?」

完成品を観てみたい

「さぁ?いつだろうね?
永遠に完成しないで終わるかも」

「永遠に?そんな事、今までもあったんですか?」

「あったかも…気持ちが切れると描くのやめたりするからね」

「ふ〜ん…勿体ない…」

「出来れば完成させたいけどね?
この絵に関しては」

「そうしてください。俺も完成品が観たいです」

「ふふっ…じゃあ、頑張っちゃおうかな」

俺を見て微笑む大野先生に、なぜかドキッとした

ストーリーメニュー

TOPTOPへ