テキストサイズ

take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

「あ、なんだ櫻井か…」

二宮先生に向かってペコっと頭を下げた

「もうそんな時間なんだ…悪い」

大野先生が時計を確認する

「アンタ、絵を描き始めると時間忘れて描いちゃうから迎えに来たんだけど 
今日は別の理由で時間忘れてたみたいね」

二宮先生が俺を見て苦笑いした

「すみません、職員会議があるって知らなくて…
大野先生、これから都合が悪い時は、事前に教えてくださいね
そしたら、俺来ないんで」

俺が立ち上がると、大野先生も立ち上がった

「ごめんな?会議まで時間あるから大丈夫だと思ったんだけど…」

大野先生は、眉毛を下げ申し訳なさそうな顔をする

「なに?櫻井はここに頻繁に来てるの?」

訝しむような二宮先生の目

ここに毎日来てる事は、知られない方が良い?

「あ、えと…」

「今日はたまたまだよ」

返事に迷ってた俺を遮るように、大野先生が答えた

「ふ〜ん…たまたまねぇ…
ま、いいんだけど
生徒と仲良くしちゃいけないとは言わないけどさ
大野先生の場合、前例がないから気を付けた方がいいよ?」

「なんだよ、それ…」

大野先生が唇を尖らす

「だからぁ、今まで特定の生徒と親しくしてないアンタが
こんな風にふたりでお茶してるなんて他の生徒にバレたら
櫻井が嫌な思いをする事になるかもしれないから、気をつけなさいよ、って言ってるの」

さっき俺も同じような事を考えた

二宮先生も知ってるんだ、大野先生の人気

「櫻井の場合、逆パターンもあるかもしれないけどね?」

「は?」

逆パターン?

「櫻井も、相当人気あるでしょ?」

「え?俺ですか?そんな事ないです」

「はぁ…ふたりとも似た物同士ってことね…」

似た物同士?大野先生と俺が?
全然違うタイプだと思うんだけど…

「あっ!ヤバイ!迎えに来たのに会議に遅れる
行くよ!大野先生」

「お、おう…
櫻井くん、また明日な」

「あ、はい、また明日…」

大野先生を引き摺るように連れて行く二宮先生が、ボソッと呟いた

「ふたりとも『また明日』って言っちゃってんじゃん…」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ