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take a breather

第25章 P・A・R・A・D・O・X

赤い糸で結ばれた俺の左手小指と大野先生の右手小指

この絵が意味することは何?

考えようとしてるのに、ドキドキと煩く鳴り響く心音が邪魔をする

「…大野先生」

大野先生の口から正解を聴きたくて、緊張しながら大野先生を呼んだ

大野先生は、ふにゃっと笑って話し始める

「櫻井くんがこのデッサンをした時に聞いたよね?
『俺の赤い糸の相手が見えますか?』って」

俺はコクンと首を縦に振った

「俺にはね?こう見えたんだよ?
入学式の日に、廊下で櫻井くんと出逢ってからずっと…
俺の小指から出た赤い糸が、櫻井くんの小指に伸びていって絡まりついたんだ」

「あの時から?」

俺がまだ、大野先生の絵を好きでしかなかった頃から大野先生は俺の事を…?

「入学式で櫻井くんが壇上で挨拶をした時
希望に満ち溢れていて、眩しいくらいにキラキラと輝いて見えたんだ
いい歳して、若い子に心をときめかせた
しかも、生徒相手にだ…
あってはならない事だと思った…」

自嘲気味に微笑みながらも、俺をしっかりと見つめる大野先生

「そんな教師失格の想いを抱いた直後に、廊下で櫻井くんと出逢ってしまった…
しかも、俺の絵を観る為にこの高校に入って来たと…
そんなの聞いたら、もう自分の想いを止められないよね
俺の描いた絵がこの子をここに引き寄せたんだ
この子を自分のモノにしたい、って」

俺が大野先生を好きになるよりも先に
大野先生は俺の事を好きになってくれてた

真っ直ぐに見つめてくる大野先生の瞳…

先生の瞳も、ちゃんと気持ちが伝わるよ?
先生の熱い想いが、俺の胸を熱くする

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