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take a breather

第26章 君のために僕がいる

『トーマ、久しぶり。元気にしてた?』

トーマの熱い抱擁を物ともせず、普通のトーンで声を掛ける翔

この温度差…

翔は、コイツからの好意を感じてないのか?
こんなにわかりやすいのに?

いつからトーマが翔に好意を抱いていたかは知らないが
翔が『トーマに会いたい』と俺に話したって事は、翔にとってトーマは友人でしかないんだろう

俺という恋人がいるんだ
トーマの想いを知っていたら、会う事を躊躇うはず

翔がアメリカから戻って来て10年は経つ

その間もコイツは翔の事を思い続けていたんだろうか…

「智くん」

翔に呼ばれてハッとする

「なに?」

ハグからは解放されていたが、ふたりの距離はかなり近い

「紹介するね?彼が話してたトーマ
母親が日本人で、ハーフなんだ
だから日本語もある程度は話せる
こっちに来た時に、1番最初に友達になってくれたんだよ?」

嬉しそうにトーマを紹介する翔

「そうだったんだ」

翔にとってもある程度は特別な友人
熱い抱擁やキスも、翔にとっては不自然な挨拶じゃないのか

『トーマ、彼は大野智
僕の秘書をしてくれてる』

『秘書?
なのに『智くん』って呼んでるの?』

トーマが不審な目を俺に向ける

『うん。智くんは幼なじみなんだよ?
前に話した事あったよね?』

『幼なじみ?
まさか、あの…』

『ふふっ、そう。約束の相手』

しあわせそうな笑顔を浮かべる翔とは対称的な、トーマの驚きと憎しみが入り混じったような表情

やっぱそうなるよな…

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