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take a breather

第4章 途中下車

「ピカイチなんて…俺こそそんな風に言って貰える人間じゃありません」

「そんなことないよ
松兄だって本当は手放したくないって言ってたぞ?」

「松岡さんが?」

「おう。俺の秘蔵っ子なんだから大切に扱えよって」

秘蔵っ子…確かに入社してからの2年間、俺も松岡さんに鍛えられた

でも、そこまで言って貰えるなんて思ってもいなかった

あの人、仕事には厳しい人だからきっとお世辞なんか言わない
俺、松岡さんに認められた?

「嬉しそうだな、櫻井」

「え…」

「顔、にやけてんぞ?」

「あ…」

顔に出ちゃってた?
恥ずかしい…大野さんに間抜けな顔見られてたなんて

両手で頬をペシペシと叩き、引き締め直した

「あんま叩くなよ…腫れたら綺麗な顔が台無しだ」

大野さんの手が伸びてきて頬に触れる

「…っ!」

触れられた瞬間熱くなる頬…

「ほら、赤くなってる」

赤くなったのは別の原因です…

ドキドキとなる心臓…
やっぱり俺、大野さんといるとそのうち絶対倒れる。

「お、そろそろ戻らないと。行くぞ櫻井」

「は…は、い…」

頬から離れてしまった手…

ホッとしたような…少し残念なような…

大野さんの手…温かかったな

繊細で器用そうな指…

パソコンだって慣れれば使いこなせるんじゃ?

でもそうなると俺がお役御免になっちゃうし…

うん、苦手なままでいて貰おう。

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