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take a breather

第30章 Still...

「高校に行かないでどうするの?」

「棟梁の弟子になる」

「棟梁って?」

「大工の親方だよ
前に家を建ててる所をずっと見てたら『坊主、大工に興味あるのか?』って声を掛けられてさ
それから家が建つまでの間、仕事を見学させて貰ったりして知り合いになったんだ
その人に弟子入りさせてくれって頼んだらオッケーくれた」

いつの間にそんな人と…

俺、知らなかった
智くんがそんな事してるの

「高校卒業してからじゃ駄目なの?」

「俺、馬鹿だからさ
高校に行っても学べる事なんて殆どないよ
それなら一刻も早く大工の仕事を身に付けたい」

智くんだってちゃんと考えてるんだ
俺が何か言った所で、智くんの気持ちが変わる事はないだろう…

でも、智くんが急に離れて行ってしまうみたいで寂しい

ううん…寂しいというよりも不安だ…

なんでこんなに不安なんだろう

いつも傍にいてくれた智くんがいなくなっちゃうから?

「翔…そんな顔するなよ」

「だって…急にこんな話するから…
智くん、何も相談してくれないんだもん」

「悪い…相談したら反対するだろ?
それに受験勉強に支障が出る
だけど、高校に行かない事を黙ったままにしておけないと思ったから、今日話すことにした」

なんで今日なんだよ…

今日はクリスマスだよ?
多くの人がしあわせな時間を過ごしているのに
なんで俺は哀しい思いをしなくちゃ…

智くんの顔を見ることが出来ず、俯いた

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