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take a breather

第30章 Still...

智くんがブランコを降りて、俺の前に立つ

「翔…俺、もう一つお前に話したいことがある」

顔をあげることは出来ないけど、智くんの声で智くんが緊張している事が伝わった

智くんが緊張するなんて滅多にないのに…

これ以上、哀しくなるような話は聞きたくない
智くんの言葉を拒否するように、ブランコのチェーンをグッと強く握りしめた

その握りしめた俺の手を、智くんの手がそっと握りしめる

冷たいのに温かい…

智くんの存在はいつでも俺を温めてくれる

そんな智くんが俺から離れて行ってしまうのかと、改めて思うと
涙が溢れそうになるくらい寂しくなった

「翔」

智くんが力強く俺の名前を呼ぶ
流石にそれを無視する事は出来なくて、俯いたまま小さな声で返事をした

「ん…」

「好きだ」

「え…」

智くんから告げられた思ってもいなかった言葉に、思わず顔を上げた

真剣な表情の智くんと目が合った

「翔の事が好きだ…ずっと前から…子供の頃から好きだった」

「さ、としく…?」

どういう事か聞こうとしたら
智くんが近付いて来て唇を塞がれた

「翔は?俺の事、どう思ってる?」

それ…順番逆じゃない?
普通はさ、俺の気持ち確認してからキスでしょ…

でもね、キスされてわかったよ

「俺も、智くんのこと好き」

さっきまで不安だった気持ちが、嘘のように晴れたから

違う道を選んでも、智くんと心が離れる事はないってわかったから

だから俺はこれからも、智くんの夢を応援し続けるね

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