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take a breather

第30章 Still...

「どうしたの?智くん
今日、仕事は?」

「雨が降り出したから中止になった
今日は親方も出掛けるから『お前もたまにはゆっくり休め』って」

「それで会いに来てくれたの?」

「ん」

「ありがとう」

智くんが会いに来てくれた
人生初、雨に感謝だな

「雅紀、この傘貸すから使って?」

「え?」

手に持っていた傘を雅紀に差し出し
雅紀が傘を握ると、俺は智くんの隣に移動した

「大丈夫なの?」

俺と智くんを交互に見て確認する雅紀

「うん、大丈夫
智くんの家、ウチのすぐ近くだから」

「そっか…なら遠慮なく
ありがとう、翔」

「どういたしまして…
じゃあ、また明日な」

「うん、また明日」

雅紀に別れの挨拶をすると、雅紀は手を振り帰って行った

「よかったのか?」

智くんが無表情で俺に質問するから、質問の意味がわからない

「なにが?」

「アイツ、先に帰らせてよかったのか?」

「あぁ、大丈夫」

途中まで同じ方向だから、一緒に帰れなくはない
でも早く智くんとふたりきりになりたかったから、あえて別れの挨拶をして先に帰って貰ったんだ

それくらいの事で、気を悪くするような奴じゃないしね

「俺、来ない方が良かった?」

「えっ⁉︎なんで?
来てくれて嬉しいよ?」

「さっきのヤツと仲良くしてたから…
俺、邪魔したんじゃね?」

「邪魔なんかしてないよ
雅紀とは仲良くしてるけど、俺には智くんが一番だから」

「ふ〜ん…雅紀ねぇ…」

会ってから、まだ一度も智くんの笑顔を見ていない

いつも優しく微笑んでくれるのに、こんな智くんは初めてだ…

せっかく会いに来てくれたのに…
俺、智くんを怒らせるようなこと、何かしたのかな

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