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take a breather

第30章 Still...

部屋のドアを開けて、智くんを中に招き入れる

「変わってねぇな…」

智くんが呟いた

数えきれないくらい、お互いの部屋を行き来した
何がどこにあるかなんて、お互い全部知ってる

「高校に入ってから、まだ3ヶ月くらいだよ?
何も変わらないって」

制服のブレザーを脱ぎ、ネクタイを外す

トレーをテーブルに置いた智くんが、ベッドの淵に腰掛けた

「高校生活、楽しいか?」

智くんが、前に立つ俺を見上げる

「うん、まぁ…」

雅紀もいるし、それなりに楽しめてる
けど、それを智くんに言うと、また智くんが不機嫌になるんじゃないかと思って、ハッキリとは言えなかった

「俺がいなくても大丈夫だっただろ?」

「それはっ…」

「責めてるんじゃねぇぞ?
俺が自分でこの道を決めたんだ
翔が楽しめてるならそれでいい…
ただ、現実を見て少し不安になったけどな」

智くんが苦笑いした

「…雅紀のこと?」

智くんと視線を合わせたまま隣に座ると、智くんが視線を伏せた

「友達が出来るのは当たり前だ
特に、翔はみんなから好かれる存在だし
中学までだって、沢山の友達がいたのは知ってる
それでも、翔の一番近くにいたのは俺だったから、安心してた」

「今だって、一番近くにいるのは智くんだよ」

智くんが視線を上げ俺を見つめる

「そうか?
お前、アイツのこと呼び捨てしてんじゃん
それに肩まで抱かれて…
俺とはそんな事したことないよな?」

智くん…もしかして俺と雅紀の仲を疑ってる?

「あれは、雨で肩が濡れてないか確認してただけ…
雅紀とはそんな仲じゃない」

「ごめん…ふたりの仲を怪しんでいる訳じゃない
ただ悔しいだけなんだろうな…
俺よりも先に、翔に名前を呼び捨てされて
俺よりも先に、翔の肩を抱いたアイツに…嫉妬したんだ」

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