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take a breather

第30章 Still...

智くんが一階に降りてタオルを濡らして来てくれた

「冷たくないか?」

ベッドの上に座る俺の体を、智くんが優しく拭いてくれる

「ん、冷たいけど気持ちいい」

ベトベトになった体がサッパリするのも気持ちいいし
熱った体が冷やされるのも気持ちいい

「そっか」

拭き終わると、脱ぎ散らかした下着を拾ってくれる

「ありがと」

それを受け取り身に付けている間に、智くんは俺の制服のズボンをハンガーに掛けてくれ
更に、いつも家で着ているスエットまで持って来てくれた

「ふふっ、流石だね」

「ん?何が?」

可笑しくて笑うと、智くんは不思議顔

「何も言わなくても、どこに何があるかわかってる」

「あぁ…翔が言ったんだろ?
何も変わってないって」

智くんが俺の隣に座る

「うん。何も変わってない
そして、これからも変わらない」

「うん…変わらない
俺の原点は翔だから、たとえ変わった気がしても、必ず翔に戻る」

「智の原点?俺が?」

「そうだよ?俺の夢は翔の言葉から始まったんだ
その夢が今の俺を作った
そして、これからも作り続ける
だから、翔が俺の原点で、何があっても必ず帰る場所なんだ」

「智…」

「この先、お互いの道を進んで行く上で、離れて行くように感じるかも知れない
でも、俺は必ず翔の所に戻るから
翔もどこにも行かないで欲しい」

智くんの言う『どこにも』は、誰の所にもって事だよね?

「うん、行かない
智が約束したんでしょ?家を建ててくれるって
その約束を果たして貰うまでは、どこにも行けないよ」

「世界一の家建ててやるからな?
楽しみに待っとけ」

「うん。楽しみにしてるよ」

智くんが高校に行かないと言った時、訳もわからず不安になった

でも、今は違う道を進んでも、必ずふたりの道は交わり合うって信じていれば
この先、何があっても不安になる必要なんてないんだ

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