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take a breather

第4章 途中下車

「えっ⁈なんで⁈」

なんで大野さんまで降りてるの?
大野さんの降りる駅はここじゃないはず

「ん?なにが?」

不思議そうに俺を見るけど、不思議なのは俺の方

「なんで大野さんがいるんですか?」

「あ〜、だって心配だろ?そんなフラついたヤツひとりで帰すなんて」

また迷惑をかけてしまった

「本当にもう大丈夫ですから
駅からそんなに距離ないし、ひとりで帰れます」

これ以上手を煩わせることなんて出来ない
迷惑かけたくないし
何よりも俺が大野さんに嫌われたくない
お願いだからもうここまでで…

「俺が送りたいんだから送らせろ
それとも俺が送ったら迷惑か?」

「へっ?」

思いもよらない言葉…

「迷惑なんて…そんな…」

「だったらいいよな?」

優しく微笑む大野さんに、小さく頷くことしか出来なかった


改札口を出てゆっくりとした歩調で歩く

「櫻井さぁ…」

「は、い…」

「俺のこと、怖い?」

怖い?なんで?優しいとは思うけど怖いなんて思ったこともない

「全くそんなことないですっ」

「そっか…なんかさ、ずっと萎縮して見えたから
俺のこと怖いのかなって…」

それは別の理由…
ただ俺が大野さんに嫌われたくないだけ

「違います…緊張してて…大野さん、憧れの人だから…」

「憧れ?なんか照れるな…
そんなこと言われるの初めてだ」

たしかに言う方も恥ずい
こんなこと言えちゃうの酔ってるせいだ…

「それならいいんだけど
初めの出会いが印象悪かっただろ?俺」

「はじめ?」

「うん…ほら、資料室で片付けてしてた櫻井に
いきなり説教したから」

「えっ!覚えてたんですか?」

あんな小さな出来事
しかも要領の悪い新人に当たり前の助言をしただけのこと

「もちろん覚えてるよ…
最初は背中越しで顔見えなくて、その後振り向いたお前の顔を見たときにさ、やたらと綺麗なのが入社して来たなって思った」

綺麗?俺が?

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