テキストサイズ

take a breather

第6章 season

7年前…

高校の入学式を目前に控えた俺は、事前に学校の様子を見に行った

ただ暇だったから…理由はそれだけ

そんな簡単な理由で出掛けた俺を待っていたのは
この先、一生忘れられない人との出逢いだった。

校門から校庭を覗くと、その日は何故かどの部活も行われていなかった

「なんだ…」

高校の制服はまだ出来てなくて、私服で来たから外から様子を見ようと思ってたのに
部活もやってないんじゃ様子も見れないか…

もう帰ろう、と思った時に目に飛び込んできたのは校庭の奥に咲く桜

満開なのに誰も見る人がいない桜を勿体ないと思ってしまった

「あんなに見事に咲いてるのに…」

人影のない校庭を横切り、桜の木に向かって歩いていく

近づけば近づくほど桜の木の大きさに驚いた

「桜ってこんなに大きくなるんだ…」

陽当たりのせいなのか、周りに他の木がないせいなのかわからないが
とにかく大きな木で、少なくとも俺が人生で見てきた桜の中では間違いなく一番の大木だった

その真下に立って上を見上げる

「すごっ…」

花びらに覆われた木は、隙間から空を見ることも出来ないくらい一面淡いピンク

こんなにマジマジと桜を見たことなかったけど、優しい色してるんだな…

気持ちが和む色…
なぜ日本人が桜の開花だけ毎年騒ぐのか少しだけわかった気がする

桜を見てると気持ちが穏やかになって
いつまでもぼーっと見ていられる

「綺麗だね…」

突然の声に横を向くと、フニャっと笑うアイツが立っていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ