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take a breather

第6章 season

智と出会って一年が過ぎた

『もしもし?翔、今なにしてる?』

春休み中に智からの電話
いつもならLINEなのに、珍しい…

「課題やってるけど
どうしたの?電話なんて…
何か急ぎの用?」

『ん…今さ、学校に絵描きに来てんの』

「春休みにわざわざ?」

『今しか描けないから…』

今しか描けない?

『桜が満開でさ…
翔にも見せてやりたくなった』

「桜?あの校庭の?」

『そう…ひとりで描いてたんだけど
去年ふたりで見たじゃん…
それ思い出して、またふたりで見たいな、って」

「あ〜、綺麗だったよね…」

昨年の見事な桜を思い出した

『だからさ、来ない?これから…』

「うん、行く。すぐ行くから待ってて」

『ん、待ってる』

智との通話を切るとすぐに制服に着替えた

自転車に跨り思いっきり漕いだ
少しでも早く智の待つ学校に着きたくて

駐輪場に自転車を停め
すぐ近くにある自販機で紙パックのイチゴ・オ・レを2本購入

それを両手に持ち智の元へ

校庭ではサッカー部が練習中
でも、桜の木とは反対側を使ってるから
桜の近くにいるのは智だけ

俺が近づく気配がしたのか
智は絵を描く手を止め振り返った

「いらっしゃい」

去年と同じ笑顔の智

「お招きありがとうございます」

そう言って片方の手に持っていたイチゴ・オ・レを智に差し出した

「お?サンキュー」

それを受け取るとポケットに手を突っ込んだ

「あ、それ奢りな?」

「え?いいの?」

「うん、招待してもらったお礼」

「…そっか、じゃあ遠慮なく」

智は嬉しそうに微笑むと
パックにストローを挿し、くわえた。

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