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take a breather

第6章 season

智はリュックの中からもう一冊のスケッチブックと色鉛筆を出した

智愛用の36色セットの色鉛筆
初めて見たときは驚いた
色鉛筆なのにこんなに色があるなんて…

そう言ったら
『こんなもんじゃないよ?もっと多いのもあるけど、値段高いし…
俺、基本は水彩画だからそこまでは必要ないし』

智の描いた絵は何度か見せて貰った
中学生の頃、賞を獲ったって話は井ノ原先生から聞かされてたし
去年も先生に説得されコンクールに出展したら、それも受賞した

智はスケッチブックをペラペラと捲る

「はい」

智からスケッチブックと色鉛筆を渡された

「ありがと…」

智からそれらを受け取り、色鉛筆のセットから一本を手にした

ピンクだけでも数種類ある
その中でも一番薄いピンク…薄紅色をチョイスした

紙一面を薄く染めていく…

「いい感じじゃん」

智が俺の塗ったスケッチブックを見る

「こんなの誰にでも出来るだろ」

「塗るだけなら出来るけどさ
力加減で出来る濃淡が人によって変わるだろ?」

「そうだけどさ…特に何かこだわって塗ったわけじゃないよ?」

「それでいいんだよ
翔が感じた桜なんだから」

そっか…たしかに智に桜の色を感じたまま塗れって言われたから
この桜を見て優しい色にしたかった
だから力を入れずに優しく染めた

最初に見たときに感じた和みの色

「それ…貰っていい?」

智がスケッチブックを指差す

「え?…あ、いいよ。元々智の物だし」

智に差し出すと、智は嬉しそうに受け取った

「ありがと」

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