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take a breather

第6章 season

智はスケッチブックを閉じた
そしてもう一度開くと…

最初のページに描かれていたのは
今、智が描いた絵とほぼ同じ絵が鉛筆でもっと細かく描かれていた

「え…なに、これ…」

「翔だよ?似てない?」

いや、俺が聞きたいのはそういうことじゃない…

なぜ同じ絵が描かれているのか聞きたかったんだけど…

更に智の手がスケッチブックのページを捲る

そこに次々と現れるのは…

「全部…俺?」

「そう…これはこの一年、翔だけを描いたスケッチブック…
驚いた?」

「そりゃ…
だって智が俺の絵描いてるところなんて見たことない」

「家で翔のこと思い出しながら描いてたからね
ちょっと引くだろ?」

智が苦笑いする

「あ…いや…引きはしないけど…」

「そっか…よかった…」

ホッとした表情を浮かべる智

「あの…でも、なんで俺?
他にもいるだろ?モデルなんて…」

「まだわからないの?
周りの人たちはみんなわかってるのに…」

レジャーシートの上に置かれていた俺の手に智の手が触れる

ビクッとして視線をその手に移した

「え…あの…それって…」

つまり、智は俺のことが好き…

俺だって智のことは好きだよ?
でも、好きの種類が違うんだよね…きっと…

俺は智を友達として見てたけど、智は違うんだ…

俺の手に触れていた智の手が俺の手の甲を覆い握られた

「…翔」

智の声に顔を上げれば、いつもと同じフニャっとした笑顔

「好きだよ…」

そう告げる智の目が優しくて、目を逸らせない

ゆっくりと近づいてきた智の唇が俺の唇にそっと触れ、離れていった。

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