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take a breather

第6章 season

「俺、海外で色んな物見てきたよ
昔から残る建物とか美術品とか…
それらは時代を跨いで何百人もの人の手と想いによって守られて来たんだよな
そんな芸術に触れるたびに感動してた」

穏やかな智の表現…
きっといい経験を積んできたんだろうな

「芸術だけじゃなく色んな景色も見てきた
でも、命あるものの寿命を永遠に伸ばすことは誰にも出来ない
だからこそ儚く美しい…
この桜もそう
咲いてる時は強い生命力を感じさせ
散る時は儚い美しさを感じさせる」

智の手が桜の幹を愛しそうに撫でる

「心動かされ、感動するモノって沢山あるけどさ
感じる思いってそれぞれ違うんだよな」

そう言われればそうか…
美しく感じるものは『綺麗』の一言で表せる
でも智の言うように力強い美しさと儚い美しさ、両方とも『綺麗』なんだよな

「俺さ、それを絵で表現出来る絵描きになる
寿命あるものが消えていく前に
目に見える物と心に感じた物を一緒に感じて貰える絵を描きたい
そう目標が定まったから日本に帰ってきた」

「智ならなれるよ
俺、智の描く絵大好きだもん
智がどう感じて描いてるのかちゃんと伝わってるよ」

空気さえ感じさせる智の絵なら
見る人みんなに智の想いは伝わるはず

「ありがと。翔にそう言って貰えると嬉しいよ」

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