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take a breather

第6章 season

「タイトルがあるんだ…」

智がその一番上のキャンバスを持った

「これは『桜人』」

『桜人』…桜を愛でる人
そこに描かれていたのは満開の桜と
智が俺専用のスケッチブックの最初のページに描いた俺

「次はこれ…『夜桜』 」

「これって…」

「怒った?描くか迷ったんだけどさ
やっぱり残しておきたいな、って思っちゃって…」

眉毛を下げ申し訳なさそうな表情をする智
その手に持たれてるキャンバスには月夜の桜と
智と初めて結ばれた日の翌日…智が描いた俺

「んで、最後。これは『舞桜』…」

最後の1枚には桜の花びらが舞い散る中
涙を流す俺…

「これは唯一 俺の想像の中の翔…
4年前 沢山泣かせたよな?
俺がここから立ち去るときも泣いてただろ」

智…あの時わかってた?
智の後ろ姿を見送りながら泣いてたこと

「本当はさ、戻って抱きしめたかったけど
それやったら翔に怒られるだろうな、って…
翔の想いを無駄にしたくなかったから、我慢した」

ちゃんとわかってくれてたんだ…
俺がどんな想いで智を見送ったのか

「で、どう?絵の感想聞かせてくれる?」

こんなに愛が溢れてる作品、見たことないよ…

作家が描かれてる人物に恋い焦がれているのが伝わってくる

「どの絵も凄いよ…」

切なさで胸が苦しい…

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