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take a breather

第6章 season

「そっか…よかった…」

嬉しそうに微笑んだ智
キャンバスを布の上に戻すと立ち上がり
ゆっくりと俺の前に歩いてくる

「俺、待たないって言ったのにこんな絵描くなんて…
俺の恋人がこの絵見たらどう責任取るつもり?
修羅場になるよ?」

自分の恋人が他の人に愛されてる絵なんて見たら、絶対いい気しない

「でもいないだろ?恋人…
翔に恋人出来たら連絡くれって潤に頼んでおいたし」

なんだそれ?
潤はお目付け役だったのかよ…
誰か紹介しようとしたのは俺の気持ち試した?

「それに…」

「それに?」

「『待たなくていいよ…
でも誰かのモノになっていたとしても、奪いに行くから』」

「智?」

「あの時言わなかった言葉の続き…
俺、やっぱり勝手なヤツだな
翔に恋人が出来てたら、この絵わざと見せに行ったよ

俺がどれだけ翔のことを愛してるか知って貰うために…
翔をこんなに綺麗に出来るのは俺だけなんだってわからせるために…」

ほんと勝手だよ…

奪いに行くってなんだよ…

奪いになんか来られなくたって
俺の心はずっと智に奪われたままだよ…

こんなに好きにさせたんだから責任ちゃんと取れよ…

「ごめん…また泣かせた」

智の指が溢れ出る涙を拭い取る

「さとし…」

智の肩に顔を埋めるようにしがみつくと
ギュッと抱きしめてくれた

「もう、離さないから
命ある限りずっと愛してくから…
だから、俺の傍に居てくれ」

智の肩口で首を横に振る

「違うよ…智の愛は命ある限りじゃない…」

「翔?」

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