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take a breather

第7章 コイゴコロ

「ちわ〜」

「いらっしゃい…
あれ?今日ひとりじゃないんだ?」

カウンターの中で忙しそうに動き回る二ノがこちらを見た

「うん、後輩も一緒」

「ごめん、今カウンターしか空いてないんだけど…」

店内のテーブル席は全て埋まってた
出てくるの遅くなったしな…

「どこでもいいよ、座れれば」

「ん、じゃあそこ座って?」

ニノが空いているカウンター席を顎で指した

「おう…」

椅子を引き、座ろうとしたら相葉が付いてきていないことに気がついた

「相葉」

入口付近に立つ相葉を呼んだ
相葉の視線はカウンター奥に向いたまま
こちらをチラリとも見ない

「おい!相葉!」

少し強めに呼ぶと
ハッとしたように俺を見た

「あ、はいっ」

「いつまでも立ってないで、ここ座れよ」

隣の椅子を引いてやった

「あ…ありがとうございます」

正面を向いたまま、ストンと椅子に座る

「どうした?何かあったか?」

「…可愛い…」

ボソッと小さな呟きが聞こえた

「は?可愛い?何が?」

この店内に可愛いものなんかあったか?
キョロキョロと周りを見渡した

「何が可愛いんだよ」

相葉の方を見ても視線は動かず…
相葉の視線を目で追った

その先にはカウンター内で作業しているニノの姿しかなくて
目に見えるところには
調理器具や食器、調味料があるのみ

可愛いと思えるような物は何一つ置いていない。

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