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take a breather

第7章 コイゴコロ

それからは今まで以上に仕事に励んだ
誰からも認められるように
会社での地位を確立するために

そして何よりも櫻井を守れるだけの力を得るために


櫻井に出会って2年経ったとき
課を挙げてのビッグプロジェクトを、先輩たちを差し置いて俺が任されることになった

就業時間を迎え3課のあるフロアーへ足を運ぶ

「松兄」

自販機で缶コーヒーを買う松兄を捕まえた

「おう、智…お疲れ」

「お疲れさま」

「どうした?何か用か?」

「うん、話しあんだけど」

「そうか…コーヒーでいいか?」

自販機を親指で指す

「うん…」

松兄はコーヒーを2本買うと歩き出した
その後を付いて行くと3課のミーティングルームに入って行く

松兄は椅子に座わると その隣の席にコーヒーを置いた

「まぁ、座って飲めよ」

「うん…ありがと」

松兄が缶を開けてコーヒーをグビッと飲む
俺はそれに続いてコーヒーを一気に飲んだ
『はぁ〜』っと大きく息を吐き、空気を吸い込むと松兄を見た

「松兄」

「ん?」

「櫻井を俺にくれ」

松兄は缶を口から離すと俺を正面から見据えた

「本気、なんだよな?」

「もちろん」

俺だってちゃんと学んでんだ
軽い気持ちで人と付き合うなんて二度としない

松兄は『ふぅ〜』と息を吐き唇を片方だけ上げ笑った

「この1年ちょっとのお前見ててわかったけどな…」

松兄の大きな手が俺の頭に乗った

「仕方ねぇなぁ…
今度の仕事勝ち取った祝いだ
人事部に掛け合ってやるよ
その代わり…」

言葉を切った松兄がじっと見つめる
無言の圧が凄い

「大事にしろよ?泣かせやがったらすぐに返して貰うからな?
俺が手塩にかけて育てたんだから」

「うん、わかってる…
松兄の想いは裏切らないよ」

松兄の目を見つめ返し答えると
松兄が優しい目で微笑んだ。

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