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take a breather

第7章 コイゴコロ

「行くぞ櫻井」

「はい」

今日は予定通り櫻井と一緒に得意先への訪問
隣のデスクにいる櫻井に声を掛けると、ニコッと笑い返事を返してくれる

緩みそうになる頬を必死に引き締め席を立った

「それじゃあ課長行ってきます」

「あぁ、先方によろしくな」

「はい」

歩き出すと櫻井は俺の数歩後ろを付いてくる

廊下に出た所で足を止め、振り返り櫻井を見る

そんな俺の隣にハニカミながら小走りで駆け寄る櫻井
その櫻井を今度こそ頬を緩めて迎える俺

「行くか」

「はい」

肩を並べて歩く歩調は、いつもより少しゆっくりめ

プライベートと仕事は切り離さないと…

そう分かってはいるけど
付き合いたてホヤホヤの俺たち…
今、このふたりだけの時間くらいは大目に見て欲しい

「これから会いに行く関西商事の村上さんは大阪出身の方でさ
the 関西人って人なんだよ」

「the 関西人、ですか?」

小首を傾げる仕草も可愛いな…

「櫻井は知り合いに関西出身の人いない?」

「いなくはないです
でも、中学の時にこちらに出てきたから標準語で話してますし
あまり関西人って感じではないですね」

「そっか…じゃあ今日会う人はちょっと大変かもな」

「え、なんでですか?」

「話す勢いが凄いから
それと友好的な人だからグイグイきて
とにかく距離感が近い
でもこれから仕事をしていく上で大切な相手だから櫻井も慣れてくれな?」

「はい、わかりました」

この時言った自分の言葉を、俺はこの後すぐに後悔することになる。

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