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take a breather

第7章 コイゴコロ

「おー!エライべっぴんさんですなぁ!」

村上さんが櫻井を見た瞬間に発した言葉

「あの…私、男ですけど…」

「そんなこと分かってますよぉ
でも美人さんに男性も女性も関係ないですから」

「はぁ…」

まさかそんな事を言われるとは思ってなかったんだろう
櫻井は困惑してた
そして俺も…

前に松兄が『綺麗なだけで手を出そうとする野郎どもがいる』って言ってた事を思い出す

男が男に?自分の事は棚に上げ
そんな事はそうそう無いだろうと思っていた俺は甘かった…

名刺を渡し挨拶する櫻井の事を村上さんはずっと笑顔で見続けていた

「『櫻井翔』さん…なんや見た目だけでなく、名前も素敵ですなぁ」

「え?あ…ありがとうございます」

「これからよろしくおねがいしますね」

そう言って手を差し出され、櫻井も笑顔でその手を握り返す

「よろしくおねがいします」

ニコニコと笑顔で櫻井を見続ける村上さん

それにしても握手、長くないか?

「あの…」

耐えかねた俺が呼び掛けても手を解かないふたり

「なにか?」

ふたりが同時に俺を見る

「あ、いえ…そろそろ打ち合わせを…」

「おぉ、そうですね
さ、あちらで打ち合わせしましょうか」

ようやく櫻井の手が解放され、ホッとする

「はい、お願いします」

笑顔でそう答えたが
内心では『櫻井のこと連れてかなきゃ良かったかな』
そう後悔し始めていた

でも、これはまだほんの序章…
これから先、俺は悩みのタネが尽きないことを知ることになる。

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