テキストサイズ

take a breather

第1章 Now or Never

あぜ道を歩きながら、絵の描けそうな場所を探す。

少し歩くと座われるくらいの大きな石を見つけた。

「うん。いい感じ」

その石に座り、リュックからスケッチブックを取り出した。
澄んだ空気の中、黙々と鉛筆を走らせる。

やっぱり好きだなぁ、この時間。

何も考える必要がなくて、ただ目の前の美しい風景を切り取っていく。


どれくらいの時間が経ったのか、気が付けば太陽は既に西に傾いていた。

流石に腹が減ったな…それに体も冷えてるし。

そうは思ってもこんな所に店なんかあるわけないよなぁ。

何か持って来れば良かった。
あまりにも無計画過ぎたか。

スケッチブックをリュックにしまっていると、一台の軽トラがやって来た。

軽トラから降りて来たのは老夫婦。
この田んぼの持ち主のようだ。

「すみません、この辺に何か食べ物を売ってる店ありませんか?」

近くに歩み寄り声を掛けた。

「食べ物?」

「はい。朝から何も食ってなくて」

「なんでもいいなら、この先におしるこが美味い店があるよ」

おしるこか…あったまりそうだな。

「どの辺ですか?」

「そこの通りに出て、左に真っ直ぐ歩いて行けば、小さな看板が出てるよ。
古い家を改装してやってる店だから見逃さないようにな?」

「ありがとうございます」

老夫婦にお礼を言って歩き出した。
古い家か…こんな田舎だもんなぁ。
入りづらかったりするのかな。
でも、背に腹は代えられないし…

少し不安を抱きながら言われた方向へ歩を進めた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ