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take a breather

第8章 rolling days

「俺はいつでも大丈夫だから
早く会わせてよ彼氏さん」

そう言うとかあちゃんはちょっと驚いてた

「いいの?」

「なんで?いいに決まってんじゃん」

「だって…普通嫌がるもんじゃない?
母親が恋人作るって」

「全然。今まで全くそういうのなかったかあちゃんが好きになったんだろ?
ってことはちゃんとしてる人なんだろうから
反対する必要なんてないじゃん」

かあちゃんは少し目を見開いた

「あんたって大人よねぇ
それとも元々の器なのかしら…
そういう所、父さんに似てるわ
遺伝子って凄いわね」

感心しながら俺を見る目が優しくて
きっとまだかあちゃんはとうちゃんのこと好きなんだと思った
それなら尚更、新しい彼氏が出来ても問題は無い

「どんな人なの?」

「とても優しい人よ」

ニコッと笑うかあちゃん
だろうな…かあちゃんから聞かされてるとうちゃんの思い出話しは『とても優しい人だった』ばかり

「また年上のじいさん捕まえたの?」

「失礼な!今度は年下よ」

「へぇ…以外。かあちゃんのことだから
また年上選んだかと思ったのに」

「年下なんだけどね、とっても親身になってくれて…
最初は『こんな子持ちのオバさんやめておきなよ』って断ってたの
でも諦めないっていうか、全然めげなくて…
この人なら大丈夫かな、って思っちゃった」

「子供にノロケ話かよ」

「だってあんたが聞いて来たんじゃない」

「ま、いいけどね
で?いくつなの?その人」

「…22」

「へっ?22?かあちゃんよりも10歳も下なの?
それ犯罪じゃね?」

「犯罪じゃないわよ!
犯罪に近いけど…同じ職場でバイトしてた子なの
今年の春から就職して、それを期に正式にお付き合い申し込まれた
付き合うならお子さんに挨拶したいって」

「挨拶って…結婚するのか?」

「まだそんなんじゃないわ
付き合い始めたばかりだもん」

「真面目な人なんだ」

「真面目で可愛い子よ」

幸せそうに笑うかあちゃん

きっと良い人なんだろう…
10歳下には驚かされたけど
かあちゃんが幸せなら問題はない

「お?そろそろ学校行かないと」

「気をつけてね
今日仕事遅番だから夕飯先に食べてて」

「はいよ、じゃあ いってきます」

「いってらっしゃい」

いつものように笑顔で見送ってくれたかあちゃん

でもその笑顔を見るのはこれが最後だった

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