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take a breather

第8章 rolling days

驚きの声を上げた櫻井さんだったけど
俺が哀しんでいると思ったのか
頭をポンポンと撫で続けてくれた

「大丈夫だからね?
頼りないだろうけど、僕が傍にいてあげるから」

優しい口調で俺にそう告げる

でも内心では俺も同じ事を思っていた

かあちゃんの代わりに
俺が貴方の傍にいてあげる

年齢的には大人なんだろうけどまだ22歳

恋人を亡くして辛くないはずはない

かあちゃんのどこが良かったのかはわからないけど
めげずにアタックし続けてくれたんだ

やっと想いが通じ、付き合いが始まってこれからって時に
突然相手を失うなんて まさに天国から地獄…

「櫻井さん、今日は泊まってって?」

きっとこの人、家に帰ったらひとりで泣く
俺はそれをさせたくなかった

「うん、いいよ」

優しく微笑む彼

かあちゃん、俺はかあちゃんの遺伝子もちゃんと引き継いでるよ

俺は10歳も年上の優しいこの人を『可愛い』と思ってしまった

家に上がって貰い、時間も時間だから今日はもう寝ようと寝る準備をする

狭い我が家…いつもの様にかあちゃんが使っていた布団と俺の布団を並べて敷いた

「おやすみ」

「おやすみなさい」

挨拶をしてそれぞれの布団に潜り込む

しばらくして聞こえてきたのは
櫻井さんの声を押し殺して泣く息づかい

「ふっ…ぅっ…」

やっぱり泊まって貰って正解だった

俺に背中を向けて横になっている櫻井さんの布団に入り込み、背中にぴたっと張り付いた

櫻井さんは一瞬びくっとしたけど
その後、呼吸も落ち着いたから泣き止んだようだ

俺はそれを確認し、眠りに就いた。

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