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take a breather

第9章 Calling

「みゃあ…」

猫?

耳を澄ましていると小さな鳴き声が聞こえてきた

ニノの店の前の植え込み…
その前にしゃがみこみ奥の方を覗く

「…いた」

「え?何が居たんです?」

「猫だ…」

「猫ですか?」

「うん、スゲェちっちゃい猫がいる」

まだ生まれて間もないのか?
手のひらに乗りそうなくらい本当に小さな猫

俺が立ち上がりその場を退くと翔がしゃがみこみ奥を覗く

「あ、ホントだ…凄く小さい
なんでこんなところに…」

この小ささだと自分でここに来るのは不可能だろう

おそらく野良猫が産んだんだろうけど
親猫はどうしたんだ?
それに1匹だけ産んだって事はないよな?
ほかの兄弟は?

「大野さん、この子弱ってませんか?」

「えっ?」

「鳴き声がどんどん小さくなってるし
頭も下がってきてる」

翔の横に座りもう一度覗いた

言われてみれば…頭が今にも地面につきそう

「どうしましょう…」

「どうしましょうって言われても…」

翔がウルウルとした瞳で俺を見つめる

そんな目するなよ…

「取り敢えず助けてやるか…」

そう言うと翔の瞳がキラキラと光った

「はいっ」

「植木押さえとくから、翔 掴み出せる?」

翔が猫に引っ掻かれたり、枝で傷ついたりしたら嫌だから
本当なら俺が掴み出してやりたいけど、距離的にちょっと届かなそう
俺より翔の方が腕長いもんな…

「はい、大丈夫です」

「ん、じゃあ気をつけて…」

枝を押さえると翔が片腕を伸ばし猫を掴んだ

「みゃぁっ…」

少し抵抗するような鳴き声

「大丈夫だよ…何もしないから…」

「み…」

翔が優しく声を掛けると猫の鳴き声も小さくなる

翔が腕を引き抜くと手には黒猫の赤ちゃん

「可愛い…」

愛おしいそうに猫を見つめる翔

俺には黒猫よりも翔の方が可愛いんですけど…

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