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take a breather

第9章 Calling

翔は両方の手のひらの上に仔猫を乗せた
ぐったりしている仔猫を心配そうに見つめている

「どうしたらいいんでしょう…」

「ん〜、ニノの所でミルクでも分けて貰うか」

「はい」

仔猫を落とさないようにゆっくりと歩く翔に合わせ俺もゆっくりと歩く

ニノの店のドアを開けると店内にはまだ誰も客はいなかった

「いらっしゃい。どうしたの休みに来るなんて珍しい」

「ちょっと仕事してきた帰り」

「ふ〜ん…で?ペットショップでも開くの?」

ニノの視線が翔の手で止まる

「ちげぇし…店の前の植え込みで拾ったんだよ」

「あぁ…この辺、野良猫いるんだよね
飲食店だと餌になる残飯があるから寄って来るんだろうけどさ
そのくらいの小ささだとカラスに狙われたりするから、親猫が隠したのかもね」

「自力ではないと思ったけど、親猫が隠したのか…
じゃあ戻ってくるかな」

「どうだろう…その様子だと戻ってくる前にくたばる可能性が高いんじゃない?」

「ええっ!そんな…」

翔の表情が曇った

「ニノ、縁起でもないこと言うなよ」

「事実を言ったまででしょうよ
今にも死にそうじゃん
そんなんじゃ自分でミルクも飲めないよ?」

確かに…仔猫は翔の手のひらでくたっとしてしまっている

「大野さん…」

翔がすがるような目で俺を見る
なんとかしてやりたいけど…

「もぉ…しょうがないなぁ
動物の扱い得意な奴いるから呼んであげるよ」

「本当ですか?ありがとうございます、二宮さん」

途端にパアッと明るい表情になった翔

よかった…これで何も出来ずに死なせたら翔に泣かれる所だった

「でも大丈夫なのか?
こんな急に呼んですぐ来て貰えるのか?」

「ん〜?大丈夫、大丈夫…速攻来るから」

そう言うとニノがスマホを手にし電話をかけた。

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