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take a breather

第10章 Lotus

「あの…何かお気に触るような事ありましたか?」

「『大野様』はヤダ…堅苦しすぎる」

呼び方?お客様からそんな事言われた事なかった…

「それでは大野さんならよろしいですか?」

哀しそうな瞳で俺の顔をじっと見て首を横に振る

「なんとお呼びすれば…」

『さん』が駄目なら『くん』?
そんな馴れ馴れしく呼んで良いものなのか?

「『智』」

「は?」

「智って呼んで?」

ニコッと笑う大野さん

「いやっ!それは流石に無理です
初対面のお客様を呼び捨てになんて出来ません
会社にバレたら怒られます」

「えー、ケチ〜」

唇を尖らせ拗ねた表情を見せる

「ケチとかの問題じゃないかと…」

「だったらいいよ…智くんで」

「いや、それもどうでしょう…」

「これ以上は妥協出来ないよっ」

なんだろう…この我儘さ

でも我儘だとは思うのに嫌な感じはしないんだ…

不思議な人…今までこんな人に出会った事ないや

相葉さんも自由奔放な所があって振り回されるけど、こんな風に拗ねたりはしない

ヘラヘラと笑って上手くはぐらかす感じ

大野さんは自分の気持ちに素直な人なんだろうな…

「わかりました…
そこまで仰るなら智くんと呼ばせていただきます」

そう言った途端に嬉しそうに笑うんだ

「ホント?いいの?」

自分から強要したくせに
なんなんだよ その満面の笑み…
こっちまで嬉しくなっちゃうじゃないか

「いいですよ。お客様のお望みには極力お応えしたいので」

「ありがとぉ」

お礼まで言われてしまった…

ふふっ…なんだか面白い人。

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