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take a breather

第10章 Lotus

「『無理』とは思わなかった…
でも わからないよ…」

さっき泣いた理由も 今 感じてる感情も
自分自身のことなのに 全く理解できない

智くんみたいな人に会ったのもはじめてだし

この1週間近く はじめてのことだらけで
データーの処理が追いついていかない感じ…

「難しく考えないで…
翔ちゃんが感じたままでいいんだよ?」

優しく微笑む智くんが諭すように話す

感じたままって…

「好きって言われて…嫌だとかは思わない…
なんで俺なのかなって ちょっとビックリしたけど…」

「うん…」

続きを促すように智くんが相槌を打つ

「だって侑李くんの方が可愛いし…」

「俺には翔ちゃんの方が可愛いよ?」

「…でも…嫌だと思った…」

「何が?」

「…侑李くんが智くんに抱きついてることが…
智くんがそれを受け止めてることも…」

「ごめんね、侑李に『これで諦めるから、さよならの意味も込めて抱きしめていいか』って言われて…
流石にそこまで突き離せなかったから許した」

そうだったんだ…

あの時 抱きしめていたのは侑李くんだけで
智くんの腕は下に下がったままだった…

「ずっと仲良くしてきたんだもんね…」

「一緒に修行した仲だからな」

「侑李くん 俺のこと恨んでるよね…」

「いいや。ちゃんと話たって言っただろ?
俺が一方的に翔ちゃんを好きになったんだから
翔ちゃんは何も悪くない…翔ちゃんを悪く思わないでくれって
そしたら 本当はわかってる、って…
でも 認めたくなかった
だから翔ちゃんに当たっちゃったって」

やり場のない想い…

好きな人には当たれないから その相手の俺にきた

「『櫻井さんにごめんなさいって 謝っておいて』って 侑李が…」

想ってる時間が長ければ長いほど その悔しさも苦しみも強いはず…それなのに…

「侑李くん いい子だね…」

そう呟くと 智くんが嬉しそうに微笑んだ

「あぁ…」

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