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take a breather

第11章 君のうた

「そん時の翔…どんな感じだった?」

「こっちが驚くくらい冷静だったわ…
母さんも一瞬悩んだの 翔に事実を話すかどうか…」

だろうな…家族と信じていた人たちが実は本当の家族じゃなかったなんて言われたらショックを受けない筈がない

俺だって実際ショックを受けたし…

「でもね、『僕 かあさんの本当の子供じゃないの?』って聞いてきた翔が不安そうに見えなかったの…
なら、ここで嘘を吐いてその場しのぎをするよりも
今 真実を伝える方が翔にとってはショックが少ないんじゃないかと思って正直に全部話したわ」

「それで翔は?」

「『そっか…やっぱり…』って呟いただけよ」

「やっぱり?」

「さっき言ったでしょ?
アルバムで確信したって…

その前から何となく感じてたみたい
はじめてここに来た時の記憶が薄っすらあったんだって…」

「記憶が?だってまだ2歳にもなってなかっただろ?」

俺でさえやっと残ってるくらいの記憶…

誕生日にかあちゃんにがいなくて寂しい思いをした後の
嬉しい出来事だったから覚えていたようなものなのに…

「ここに来るまでね、翔ずーっと泣きっぱなしだったのよ…
突然両親がいなくなって…それを理解するのは不可能で…
きっと不安しかなかったと思うわ…
前に翔が可愛くてここに連れてきたって言ったでしょ?」

「うん、かあちゃんらしいと思って聞いてたけど…」

苦笑いするかあちゃん

「それだけじゃなくて…
泣き続ける翔をほっておけなかった…
あなたよりも幼い翔が
このまま笑えなくなるんじゃないかと思ったら苦しくて
だから とうさんに頼み込んで家で引き取ることにしたのよ
そろそろあなたに兄弟を、って考えてたところだったし…」

簡単に決めた訳じゃなかったんだ…

ごめん かあちゃん…
俺、かあちゃんって もっとお気楽に生きてる人間なんだと思ってたよ

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