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take a breather

第11章 君のうた

「さと兄…」

「えっ!なに?」

緊張のせいからか
翔に呼ばれ 大袈裟に反応してしまった

「明日の朝ごはん、何か買ってかないと…」

「あっ…そ、そうだよな…何がいい?」

「パンとかでいいんじゃない?」

「そうするか
じゃあコンビニで買い物して帰ろ」

「うんっ」

途中 コンビニに寄ってパンとヨーグルトを購入

「さ、帰るか」

ふたり並んで歩き出し
20メートル程進んだところで翔の足がピタっと止まった

「どうした?」

「牛乳買い忘れた
僕 買ってくるから さと兄先に行ってて」

「一緒に行こうか?」

「大丈夫!すぐに追いつくから」

「ん、わかった。走らなくていいぞ?
ゆっくり歩いてるから」

「ありがとう 行ってくるね」

翔は振り返ると勢いよく走り出した

走らなくていいって行ったのに…

ゆっくり歩こうと思ったけど
あの様子じゃ帰りも走って来るだろうな

ここで止まって待ってるか

案の定、猛ダッシュで戻ってきた

「待っててくれたの?」

息を切らし頬を紅く染める翔

「走らなくていいって言ったのに
ダッシュで行くから」

「だって…早く さと兄の所に戻りたかったんだもん…」

「だから一緒に行ってやるって言っただろ?」

「えっ!あ、そうだけど…
わざわざふたりで戻る必要もないかな、って…」

翔なりの気遣いだったんだな

「そうだな、サンキュ…
もう買い忘れはないよな?」

「うん、もう大丈夫」

翔がニコッと笑って答えた

「じゃあ今度こそ帰るか」

人通りもない少ない時間帯…

買い物袋を右手から左手に持ち直し
空いた右手で翔の手を握る

「うんっ、帰ろ」

俺の手を握り返す翔の嬉しそうな声

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