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take a breather

第13章 Monster

舌を出しペロッと血液を舐める

「あまっ!」

「え?甘いの?」

「うん、甘くて美味しい」

ニコッと笑うカレの笑顔に嘘はなさそう

その後もグラスに口を付けちょびちょび啜る

「はぁ…美味かった…
久しぶりにモノを口にしたよ。ありがとう」

「久しぶり?どれくらい食べてないの?
3日とか?
それで血液だけって大丈夫なの?」

医者の立場としてはありえないんだけど…

いや、その前に人間の血液を飲む事自体がありえない…

「最後にモノを食べたのは何年前だろ?
もう覚えてないや…
おいら食べなくても死なないから
食べるの面倒くさくてやめちゃったんだよね」

「……へっ?
何?どう言う事?」

食べなくても死なない?
そんなヒトこの世の中にいる訳…

「あ、まだ自己紹介してなかったね
おいら智…吸血鬼やってます」

吸血鬼?このヒト正気か?

手を差し出されたがカレの顔を凝視したまま動けなかった

するとカレが俺の腕を掴み手を握る

「よろしくな」

「あ…よ、ろしく…」

『よろしく』していいのかな…

俺、とんでもなく危険な状況なんじゃ…

「君の名は?」

「櫻井 翔…医者、やってま、す…」

「へぇ…『翔』かぁ…」

カレの眼差しが懐かしい物でも見るかのように優しい

「ねぇ、翔…」

いきなり名前を呼び捨てにされ
またドキッとした

「なに?」

「おいら、ココに住んでもいい?」

「………え?」

ココに住む?俺、このヒトの餌にされる?

「やっぱダメだよね…」

しゅんと肩を落としたカレにズキンと胸が痛む

「いや…駄目じゃ、ない…」

何言ってんだ?俺!
絶対駄目に決まってんだろ⁈

なのに…

「ほんとっ⁈いいの?」

カレの笑顔を見るとそれだけで胸がキュンとする

だから頭では駄目だと思っているのについ言ってしまうんだ

「いいよ、ここに住んで…」

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