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take a breather

第13章 Monster

その日の夜…不思議な夢をみた

とてもリアルな感覚…そして感情

横たわる苦しそうな人…その人の手を俺はぎゅっと握りしめている

『サトシっ…よく効く薬草が山向こうに行けばあるんだって!
ボク、取ってくるからっ!
それまで頑張って!』

『だ、めだ…ショ、タ…
や、まを…こ、えるな、て…
きけ、すぎ、る…
おい、らの…た、めに…そ、なこと…する、な…』

『はぁはぁ』と息を切らし
苦しそうに横たわる彼は智くんによく似てる

俺自身の姿は自分では目視出来ない…

『だってこのままじゃサトシが死んじゃうっ
サトシが死んだら、ボクっ…』

勝手に言葉が口をつく

俺なのに俺じゃない…

でもその気持ちは痛い程伝わってきて
哀しみと不安に押しつぶされそう…

『泣、くな…ショォ…』

苦しいはずなのに俺に優しく笑い掛けるサトシ…

手を伸ばし俺の頭を撫でる

『サトシ…』

『ゴホッゴホッ…』

サトシが激しく咳き込み手が頭から離れた

『サトシっ!
ボク、絶対に薬草取って戻ってくるから!
ボクが戻るまで死なないでっ!』

俺は立ち上がり駆け出した

『ダメだっ!もど、れっ!ショ…』

背後からサトシの叫ぶ声が聴こえる…

そこで夢は終わった…筈なのに…

「泣くな…翔…
やっと、会えたんだから…」

俺の頭を撫でるのはダレ?

これは夢か現実か…

安らぎと苦しさが混在する
複雑な想いに胸が張り裂けそう…

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