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take a breather

第13章 Monster

買い物を終えて食事へ…

今日は秋から冬にかけての味覚
家ではなかなか作ることのないカキフライを食べることにした

智くんも外に出た時は俺に合わせて普通の食事を食べてくれる

「旨いな、カキフライ
このタルタルソースって言うの?
これがメッチャ旨い」

智くんは満足そうにタルタルソースだけをお箸の先につけて舐めた

「ほんと?良かった…
無理矢理付き合わせてたら申し訳ないからさ」

「んなことねぇから気にするな」

なんの稼ぎもない智くんは
食料を購入する事が出来ない、ってのが食べなくなった大きな要因らしい

「昔は木ノ実や川魚なんか取って食ってたんだけどな…
人が多くいるところはそれが難しくなった
食べる量を減らしてったら食べなくてもいられるようになって…進化ってやつ?」

「なるほどねぇ…
だったらさ、これからは家でも一緒にご飯食べようよ
ひとりよりふたりの方が作り甲斐もあるし」

「翔がそうしたいなら構わねぇけど」

「じゃあそうしよっ
あ、でも味覚ってどうなんだろ…
カキフライは大丈夫だけど他の物は駄目とか?」

「そんな気を遣わなくて大丈夫だよ
元は人間なんだから味覚は一緒だって」

「えっ⁈智くん人間だったの?」

「そうだよ、知らなかった?
吸血鬼って生まれた時から吸血鬼じゃないから」

「じゃあなんで吸血鬼になるの?」

「理由は人それぞれ…
おいらの場合は未練、と言うか
やり残した事があったからだな」

智くんが哀しそうな顔をしたから
その先を聞いていいのか迷った

でも聞きたい…

智くんが何に対してそこまでの思いがあったのか

きっと余程の強い思いがあったはず

ちょっとやそっとの未練ぐらいじゃ
世の中吸血鬼だらけになってる筈だから

「…そのやり残した事が、探し物なの?」

「ん、そう…
どうしても約束を守りたかった
だから絶対死ねないって思ってたのに
病に負けちまったんだよなぁ…」

病に負けた…本当はそこで死んでたんだ
でも蘇った理由は?

「智くんの探し物って、何?」

「…約束した相手」

そう言った智くんの表情が優しくて
全てを語らずともわかった…

智くんが吸血鬼になってでも約束を守りたかったのは
『約束の相手』に強い想いがあったから…

智くんにとってとても大切な人なんだ…

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