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take a breather

第3章 このままもっと

コンコン…

自分の部屋でパジャマに着替え、枕を持って智くんの部屋のドアを叩いた。

「どうぞ…」

ガチャっ…

ドアをそっと開け、中を覗きこむ。

「お邪魔、します…」

「いらっしゃい」

ベッドの上の智くんは、ふにゃっとした笑顔で迎えてくれた。

俺がベッドに近付くと、被り布団を少し捲りあげてくれた。

「どうぞ?」

「…どうも」

枕を置き、智くんの隣に潜り込む。

「久しぶりだね、翔くんと一緒に寝るの」

「うん…」

智くんと寝るのは子供の頃からの癖のようなモノ…

俺が泣きたいときは智くんと一緒に寝させて貰ってる。

ここ数年はそんなに激しく落ち込むこともなかったし、ましてや彼がいたときは、例え相手が智くんだろうと、誰かとベッドを共にするなんて出来なかった。

この癖の始まりは幼稚園のお昼寝の時間…
入園したての俺は、母親が恋しくて泣き続けていた。

先生たちがどんなに宥めても泣き止まなくて、お手上げ状態。

そんな時、隣に寝ていた智くんがムクッと起きだし、俺の布団に入ってきた。

あまりにも突然のことに驚いた俺は、泣くことを忘れた。
その後、智くんが背中をトントンと優しく叩いてくれて、俺は眠りについたんだ。

その日から毎日、智くんは俺を寝かしつけてくれた。

幼稚園の先生たちが『翔くんを泣き止ませる事が出来るのは智くんだけね?』なんて言ったら

『うんっ、だってぼくが王子さまで翔くんはお姫さまだから、翔くん助けられるのはぼくだけなんだよ?』
智くんは嬉しそうに笑ってそう言った。


でも、あの時智くんが言った言葉は事実で

今でも俺を泣き止ませることが出来るのは智くんだけで、俺を助けられるのも智くんだけ

というか、今の俺は智くんの前でしか泣けないから、泣き止ませる事が出来るのは智くんだけなんだ。

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