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take a breather

第3章 このままもっと

「いかがでしょう?ご検討頂けないでしょうか?」

取引先の小会議室。
交渉相手の部長とその部下に資料を提示する。
 
「いやぁ、いいお話です。
前向きに考えさせて頂きますよ」

「ありがとうございます」

「まだお若いのに、ここまでの仕事を任せられるとは、会社からも信頼されてるんでしょうね。
うちの社員たちとは大違いだ。
な?相葉。お前も少し見習ってくれよ?」

「はい。精進します」

部長の隣に座ってる彼が爽やかな笑顔で部長に答える。

「私はこれから社内会議があるのでこれで失礼します。 
今後の細かい打ち合わせは担当の相葉に任せますので、面倒みてやってください」

「はい。本日はありがとうございました」

席を立つ部長に対し、こちらも立ち上がってお礼を陳べた。

「今度、一度プライベートで飲みに行きたいものですな」

「是非、お願いします」

部屋を出ていく部長を見送り、再び椅子に座る。

「相変わらずの仕事振りだね」

正面に座る彼から声が掛かる。

「そりゃそうだろ…会社から任されてる大きな事案なんだから」

俺は彼の顔を見ることなく、そう答えた。

「さすが…と言うべきなんだろうけど、少しは落ち込んでるかと思ったよ」

「仕事とプライベートは切り離してるから…」

「そう思ってても引きずるのが普通の人間なんだよ?
引きずらないってことは、翔はそれほど俺のことを好きじゃなかったってことだよね」

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