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take a breather

第16章 WISH

「ただいま〜」

「あ、おかえり雅紀」

「おっ、智来てたんだ?丁度良かった」

「なに?丁度良かったって」

「24日、俺の代わりに働いてくれる友達連れて来たからさ」

あ〜、例の…

雅紀が店の入口に立ち手招きする
すると雅紀と同じ制服を着た奴が外を歩く姿が見えた

店内に入ったそいつの肩に雅紀が手を回す

「クラスメイトの櫻井翔くんだよ」

「櫻井です、よろしくお願いします」

肩を抱かれたそいつがペコっと頭を下げた

「君が櫻井くんかぁ…
雅紀から話は聞いてるよ
クラスの委員長やってて、成績は学年トップの優等生だって」

『櫻井』と名乗ったそいつは銀縁眼鏡を掛け、髪もきっちり七三気味にセットし
ビシッとした佇まいで、見るからに優等生っぽい

「いえ、全然優等生なんかじゃありません
僕よりも優れた人は大勢いますから」

『優等生』の否定の仕方も優等生だな…

俺なら『優等生』なんて褒められたら照れるのに
櫻井くんは照れることなく真面目に否定する

「そんなことないよ
少なくとも俺の周りでは一番の優等生だよ
だからバイトだって頼んだんだよ?」

「櫻井くん、1日だけだけど
よろしく頼むね?」

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

おじちゃんに向かって丁寧に頭を下げる

これで俺の1コ下?

こんな優等生くんと1日一緒に仕事するのか…

話し合うのかなぁ
俺、真面目な話とか頭の良さそうな会話とか無理なんだけど

雅紀も本当は友達と言うより知人に近い関係なんじゃないか?

こう言っちゃなんだが
雅紀だってそんな賢い会話が出来るとは思えない
だから友達同士で集まるパーティーに参加しない櫻井くんに
バイトを頼んだんじゃないか?

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