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take a breather

第16章 WISH

「ホント?」

「うん、ホント
今度さ、オススメのスイーツ一緒に食べに連れてってよ
俺、スイーツは好きなんだけど
食べ歩きはまだ出来てないんだ」

「うんっ!行こう!
どこがいいかなぁ…」

楽しそうに思いを馳せてる姿に見惚れてしまう

「あっ!」

「え?」

「早く帰らないとお店に迷惑掛けちゃう」

「あっ…そうだった。急ごう」

「うん!」

急いで昼メシを食って仕事に戻る

さすがクリスマスイブ…
予想通り午後は忙しくて
ひたすらケーキを売りまくり
夜メシを食う時間さえなかった

「はぁ…腹へったぁ…」

「お疲れ、智、櫻井くん」

「お疲れさまでした」

櫻井くんも慣れない仕事で疲れただろうに
そんな素振りを見せることなく礼儀正しくお辞儀をし挨拶をした

「櫻井くん、今日は本当に助かったよありがとう
はいコレ、約束のケーキとバイト代」

おじちゃんがケーキの箱と封筒を櫻井くんに渡す

「ありがとうございます!」

櫻井くんが嬉しそうに受け取った

「でもいいのかい?
1番小さいサイズだけど…
どうせなら大きいのにすればいいのに」

「いえ、これで十分です
明日は大きいのを予約してるので」

「え?そうなの?」

「はいっ!明日は家族でホームパーティーをするので1番大きいのを頼んであります」

「そっかぁ。ありがとね」

「ここのケーキはウチの家族も大好きなんです」

「嬉しいなぁ…ご家族の方によろしく伝えて」

「はい。それではお世話になりました」

「気をつけて帰るんだよ」

おじちゃんに頭を下げると櫻井くんは俺の方に向き直った

「大野くん、お世話になりました
大野くんのおかげで1日楽しく働けた」

「いや、俺こそ楽しかったよ、ありがとな」

「こちらこそ、ありがとう
それじゃあまた…」

「ん、またな…」

櫻井くんはニコッと笑うと
外していた眼鏡を掛けて店を出て行った

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