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take a breather

第18章 君への想い

トランクに荷物を入れ終わると
他のツアー客も姿を見せ始めた

「ふたりともバスに乗っちゃって?
席は自由だから好きな所に座っていいよ」

「うんっ。行こう風ちゃん」

「は〜い」

バスに乗り込み座る場所を考える

「どこにしようか…」

「え?もちろんここでしょ?」

風ちゃんが指したその席は
翔くんが座る席の通路を挟んだ隣の席

「えっ!そこっ⁈
こんな近くにいたら翔くん迷惑なんじゃ…」

ただでさえ、同僚がツアーに参加なんて
本当はやりづらいんじゃないかと思ってるのに…

「大丈夫ですって
ほら早く早く」

窓側に座ってしまった風ちゃん
となると、僕は自然と通路側に座ることに

翔くんの近くにいられるのは僕としては嬉しいよ?
でも、本当にいいのかなぁ…

その後、次々と乗り込んでくるお客さんたち

熟年夫婦やおばさまたちの団体客、外国の方たちや女性同士の親子らしき2人組

どんどん席は埋まっていき
最後に翔くんが乗り込んで来た

僕と目が合うと優しく微笑んでくれる

ここにいても迷惑じゃないってことかな?

翔くんがマイクを持った

「おはようございます
本日は我が社のバスツアーをご利用いただき、誠に有難うございます
今日から3日間、皆様の旅のお供をさせていただく櫻井翔と申します、よろしくお願いします。
旅の途中でお困りのこと、ご要望等ございましたら
遠慮なくおっしゃってください
この3日間が皆様にとって素敵な思い出となりますよう、お手伝いさせていただきます

Good morning everyone…」

悠長な英語で、おそらく同じ内容を挨拶をした翔くんが深々とお辞儀をした

車内からはパチパチと拍手が起こる

「それでは、早速バスの方、出発させていただきます
All abroad」

ゆっくりと走り出し加速していくバス

僕のワクワクも加速する

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