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「翔ちゃん」

「ん…」

智くんの呼びかけに視線を伏せたまま答えた

「頑張ったご褒美欲しいな」

智くんが頑張ったからって
本来なら俺からご褒美をあげる筋合いじゃない

あくまでも成績を上げるのは
自分自身の為なんだから

でも、申し訳なさの残る俺は…

「いいよ…何がいい？」

そう言ってしまった

「キスして欲しい」

「…はっ⁈なに言って…」

とんでもないおねだりに
勢いよく顔を上げた

「唇にじゃなくて、ほっぺでいいよ？」

智くんは大した事でもないだろうとばかりに、ニコッと笑う

ほっぺたでも、男相手にキスなんてした事ないよ

「ダメ？」

「ダメってかさ…そんなのご褒美になる？」

「なるなる」

首をコクコクと縦に振る智くん
本当にご褒美になるのか？男相手の頬チュウなんて

でも本人がが望んでるんだもんな…

「なら、いいけど…」

「じゃあ、お願い」

智くんが俺に頬を向ける

智くんの肩に手を置き近づいたんだけど…

なんでだろ…ドキドキする
たかがほっぺたにキスするだけなのに

でも約束しちゃったし、今更引けない

『うん』とひとつ頷いて気合を入れ
頬にそっと唇を押し付け離れた

「ふふっ…ありがと」

智くんの嬉しそうな声

こんなんで本当に喜んでる？

「翔ちゃん、顔紅いよ？」

「だって、恥ずかしいじゃん
こんな事したことないんだもん」

「キスしたことないの？」

「それはあるっ」

「なんだ、あるんだ…残念…」

智くんの哀しそうな顔…

俺、悪くないよね？
この歳なんだから
彼女がいた過去があったって普通だろ？

なのに、智くんの哀しそうな顔を見て心が痛んだ